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Institute of Dragonfly Natural History

トンボ自然史研究所

2014年8月17日
オープン!
             

ご挨拶


トンボ自然史研究所
代表 生方 秀紀

トンボの不思議と研究所の関わり

空飛ぶエンピツ。俊敏な宝石。ヨロイをまとった天使。トンボはまさに昆虫王国の親善大使といえるでしょう。日本人ならだれでも、トンボについての知識やイメージは一通り持っているに違いありません。

しかし、トンボの生活や行動にちょっと深入りすると解らないことだらけです。たとえば、卵からどんな幼虫が出てくるのか、幼虫はどうやって餌を捕まえるのか、幼虫から成虫になるときに呼吸の仕方をどう切り替えるのか、若い成虫はなぜ水辺に近づかないのか、交尾相手の性別をどう見分けているのか、老化したトンボは何をしているのか、といったことがらです。

トンボの分類体系がほぼ完成した20世紀初頭以降、世界中のトンボ研究者(その大部分はアマチュア)が、これらの謎を観察や実験により、一つずつ明らかにしてきました。その研究の蓄積を丁寧につなぎ合わせ、一枚の大きな織物にした人がいます。その人の名は、フィリップ S. コーベット博士、イギリスの生物学者です。このライフワークは『Dragonflies: Behavior and Ecology of Odonata』と銘打って1999年にアメリカで出版され、その8年後に日本語版が『トンボ博物学‐行動と生態の多様性』(海游舎)として世に出ました。私は、この日本語版の出版に情熱を傾け、監訳および分担訳のほか、連絡・調整にもあたりました。トンボのことならなんでも分かる本ですので、ぜひ読んでいただきたいです。

このたび、トンボ自然史研究所を開設するにあたり、私自身の40年あまりのトンボ研究の経験と、『トンボ博物学』に盛り込まれたトンボ学の知識体系をベースに、最新の国際的な研究の進展も取り入れながら、執筆や講演等の活動を行うことで、一般の方々にわかりやすくトンボのことを知っていただき、それを以ってトンボの不思議、楽しさ、大切さを感じ取っていただくことを目標として設定しました。

トンボのふるさとを取り戻す

トンボの飛ぶ姿は、元気やユーモアを、脱皮したてのイトトンボの姿ははかなさを、私たち日本人に感じさせてくれます。そして夕焼け空に赤く染まるトンボの群れは、遠いふるさとを思い出させます。

このように、トンボは日本人にとって身近な存在でした。しかし今はどうでしょうか? 湿地は埋め立てられ、川はコンクリートの護岸で固められ、湖は農工業からの廃水や生活排水で汚れ、水田には殺虫剤が散布され、更にはどう猛な外来種の侵入・分布拡大によって追い打ちをかけられています。その結果、私たちがトンボを見かける機会はとても少なくなっています。

環境省レッドリストでは、ベッコウトンボなど5種が野生絶滅の一歩手前の絶滅危惧IA類にランクされています。加えて、10種が絶滅危惧IB類、13種が絶滅危惧II類、そして26種が準絶滅危惧にリストされています。日本産203種のトンボの、実に4分の1が絶滅を懸念されていることになります。

日本のトンボの多様性を守り、更には復活させき、トンボをふたたび身近な存在に戻していくためには、トンボの生息地の保全や復元、生息地周辺地域の植生の回復、水質汚染防止、とくに殺虫性農薬の規制、外来種の分布拡大防止などが必要です。

これらの保全策を人任せにするのではなく、多くの人が主体的に参加し、国全体として実効性のある取り組みをするように動かしていくためにも、トンボ好きの人、トンボの減少に危機感をもつ人、解決の方向をつかんでいる人、そしてそのために行動する人を増やしていくことが必要です。当研究所の執筆活動、講演活動等が少しでもそのために役立てればと考えております。  

2014年8月

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